1973年4月3日(火)欺瞞に満ちた革マルによる「統一行動」の呼びかけ。

提供: 19721108
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【概要】

新入生を迎えた文学部キャンパスではリコールされた革マル派自治会の巻き返しが始まった。「一文自治会常任委員会」のビラが公然と配られ、「統一行動」の呼びかけが繰り返し耳に入るようになった。さも常任委員会と執行委員会の2つの自治会があるように見せかけて新入生を自陣に取り込もうとする企みである。一方で当局は、執行委員会に対して自治会承認のための5原則を提示し、その実現を求めた。

【この日のできごと】

◎教育学部入学式。常任委員会は団交要求を掲げ介入。式は中止となる。
●大学院、専攻科の入学式は中止。
■革マルによる「統一行動」4原則の呼びかけが始まる→「安易に統一行動を分断することは許されない」という恫喝付きで。


【自治会の主導権】

朝日新聞は3日の記事で、前日の入学式の中止、高田馬場駅での革マルと中核の衝突は、今後に続く早大の“混迷の季節”を象徴していると書いた。
「セクト中心の自治会と思想、行動の自由、自治会運動の理念と大学当局の姿勢…。約5ヵ月にわたる運動の中でも、これらは解決のメドのつかない課題として新学期に持越されてきた。新入生1万556人からどちらがより多くの支持を得るかは革マル派、反革マル自治会双方にとって大きな意味を持ち、また貴重な“戦力”になる可能性を持つ。クラス編成やガイダンスを利用した双方のオルグ活動は活発となり、自治会の主導権をめぐる争いは激化するとみられている。反革マルの学生は自治会無条件承認、総長団交開催を要求して年末試験ボイコットのストライキを続けてきた。政経、教育、一文の三学部は、延期中の学年末試験を4月中に実施する構えだが、これらの学部の反革マル自治会は要求が入れられない限り闘いの姿勢を変えないとしており、ここにも混乱の芽はある。一方、革マル派は相変らず『闘う自治会』を主張し、自派の各学部自治会を死守するという。一部には新入生のなかにかなりの活動家が含まれているとのうわさもある。」(1973年4月3日付朝日新聞夕刊)

【2つの自治会】

入学式が終わり、新入生の姿が学内に定着するのと時を同じくして、「統一行動」を呼びかける「一文自治会常任委」のビラが出回るようになった。曰く「反戦・反基地の闘い、春闘・国鉄スト支援そして政府自民党の『筑波法案』立法化・早大当局の学生管理強化に反対する早大全学の統一した力の結集を」克ち取るために「全ての闘う部分の統一行動を、全自治会員の手で実現していかなければならない」とある。
これは、11月にリコールされた革マルによる一文自治会常任委員会が、新学期の混乱に乗じて勢力を巻き返そうとした策動であった。さらに11.8後に選ばれた新執行部(樋田委員長)に対しても「不当な敵対行為を続けている『自治会執行委員会』を自称する諸君に対しても、自治会問題を踏み絵としない統一行動を呼びかけるものである」としている。すなわち、反戦・反基地の大義のために自治会の主導権争いを中断し、統一組織として行動しようという呼びかけは、員数拡大を目的とした欺瞞に満ちた取込作戦以外の何物でもない。新入生に「自治会常任委員会」と「自治会執行委員会」を混同するよう仕向けることで、4.10に予定されていた学生大会に向けての新執行部の情宣を妨害し、勢力の拡大を抑制することが目的だったと思われる。
これに対し新執行部は、川口君虐殺事件に関与した革マルの常任委員会はすでに11.28学生大会においてリコールされていることを再度周知し、革マル派がいかにも2つの自治会があるように印象づけようとしていることは許しがたいと表明した。
後日、2Tの有志から「新入生諸君だまされてはいけない!」と題したビラが出された。「新入生諸君、だまされてはいけない。これは君達の前で君達をエジキにせんと目論んだコッケイなしかし悪質な茶番なのだ。4月以前を知っている者には見えすぎるほど見えすいた茶番なのだ。誰でもいい、2年生以上の者にきいてみたまえ。どちらが本当のことを言っているかが判るだろう。(中略)今文学部は革マルオンパレードである。そしてそれには〈4.10統一学大〉と書いてあるだろう。〈統一〉にはわれわれ〈悪質ノンセクト〉も入れてくださるそうだが、われわれにとって殺人集団との〈統一〉など思いもよらぬことである。そもそも4.10学大はわれわれが設定し、会場の181教室もわれわれが借りたものである。(事務所にでも行って聞いてみたまえ。)その学大に対し常任委=革マルは、4月になってからあたかも自分達が開くかのように〈テロつき統一〉を看板にして統一学大を打ち出してきたのである。(中略)彼らがいくら『相模原』や『横須賀』や『労働支援』などの看板をデッチ上げようと、自らの自治会員を虐殺し、鉄パイプで殴りかかる彼らに、その資格は一片たりともありはしない。」

【自治会員証の配布】

さらに驚くべきことに、この革マル「常任委員会」は、新入生に対し「自治会員証」を配布した。従来は学生大会に出席した折、学生証の表示によって投票用紙とともに配布されるという慣例であったが、それを無視してあたかも「常任委員会」が正統な自治会であるかのように印象づける行為であった。

【一文当局からの五原則要求】

“2つの自治会”と呼応するタイミングで4月2日には一文・二文教授会・教員会の名前で「学生自治会のあり方について一応の見解をまとめた」として、以下の五原則が提示された。
(1)新執行部が、学生大会決定事項につき、学部投票の方法で、学部自治会員過半数の支持を確認すること。
(2)クラス委員(自治会委員)選出のための公正な選挙管理委員会の設置。
(3)選挙期間・方式等をあらかじめ明示した上での、クラス委員選挙、及び公開の開票。
(4)クラス委員総会において多数の支持をえた執行部の選出。
(5)執行部による、全自治会員の総意を常時反映しうるような自治会規約案の提示と、その全自治会員による絶対多数による承認。
なお、この告示は「新入生諸君へ」となっており、在学生が「暴力排除・学生自治の問題」に積極的に取り組んでいる折から、「新入生諸君の健全な自治会再建への努力を期待してやまない」と結ばれている。
これに対して一文自治会執行委員会(樋田委員長)は「自治会再建『五原則』は誰のためか」と題したビラのなかで、「学生自治の原則は、その構成員である学生自らが、その自主的な自治活動のなかで創り出し確認していくものであって、教授会が学生自治の原則をうんぬんすることをわれわれは断じて許すことができない」と、すでに自治会の原則として知性とモラルを尽くして作り上げた「九原則」(1972年12月12日を参照)を打ち出していると反論した。
「われわれの創る自治会は、すべての学生の創意による自治活動を保障し、共同の努力によって新たな価値の創造を図り、学生の利益を守る自治会である」とし「われわれは〈九原則〉のうえにしっかりと立ち、学部当局に対して学生の利益を守るために断固闘うことをすべての自治会員のまえに誓うものである」と宣言した。

【リンク】

学友諸君だまされてはいけない! 一文2T有志
4月10日一文学生大会に向けて 一文自治会執行委(樋田委員長)
自治会再建「五原則」とは何か、誰のためか 一文執行委員会