1973年2月9日(金)一文、教育、社学で学部見解が示される。

提供: 19721108
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【概要】

「新自治会を承認する条件」を巡る新聞報道に対し、一文教授会は事実誤認であるとして抗議を表明した。社会科学部では、予定されていた学部集会が中止となった。教育学部は「いわゆる六項目および四項目要求に答える」を示し、新執行部に対する当局の姿勢を示した。


【この日のできごと】

●「新自治会否定」との一部の新聞報道に対して一文教授会が反論。
●教育学部長名で「いわゆる六項目、四項目要求に答える」を掲示。
●社学当局は、自ら提示した学部主催の説明集会を中止。卒業試験をレポートに、3年生以下の学年末試験は無期延期とした。


【承認条件に関する新聞報道】

9日付の読売新聞朝刊は、「早大一文教授会 新自治会否定の文書を郵送」と題して第一文学部当局の文書郵送に関連して次のように報じた。「早稲田大学第一文学部(本明寛学部長)は、8日、反革マル派学生が進めている自治会再建運動について、教授会の見解を文書にして全学生に郵送した。これは新自治会承認のための条件を示したもので、それによると、まず自治会再建の意思を学部投票で問い、在籍学生の過半数の賛成を得ることを前提にしている。昨年11月28日に結成された反革マル派自治会は、すでに自治委員や執行部の選出を終えており、今度の教授会見解は、新自治会を事実上否定して白紙に戻そうというもの。このため、学生側の反発は必至とみられている。」
また、朝日新聞も同日の朝刊で「自治会の承認に条件。過半数の支持要求」を見出しに立て、自治会関連で「同学部当局が公式に見解を表明したのはこれが初めて。また自治会再建運動の起きている政経、教育、一文、二文、社会科学の五学部当局の自治会に対する見解が出されたのは、政経学部に次いで2番目である。(中略)川口君リンチ事件以後、学部当局は革マル派自治会執行部を処分し、同派の自治会活動を認めないと決めており、一方反革マル派学生は学生大会で臨時執行部を選出、その後の学生大会で革マル派に代わる新執行部を選び、学部当局に承認を迫っていた。この学部見解について学生たちの間には、ふだん三分の一ぐらいの学生しか登校しない状態からみて四項目をみたすのは事実上不可能なことで、学部当局の新自治会弾圧だとする意見も多く、なお曲折が予想される」と結んでいる。
これらの報道に対して一文当局は、学部長名で次の掲示を出した。
「学生諸君へ
 本日(9日)一、二の新聞紙上において、自治会問題についての文学部の本意が誤って伝えられている面がある。文学部教授会の意向は、去る2月5日における学生諸君との会で公表した内容といささかも異なるものではなく、今後もその線に沿って積極的に対処していくことを明らかにする。文学部としては新聞社に対して早急に訂正記事を掲載するよう申し入れた。
2月9日     第一文学部長」


【社学当局による学生集会中止の理由】

この日、社会科学部では当局が開催を予定していた学部集会が中止となったが、社会科学部当局はその理由を2月15日付の告示「学部集会に代えて」の中で次のように説明した。「2月9日の現状からして、平穏に学部説明会が催される状態ではなかったので、今回、ここに文書を以て、これに代える次第である。」
また、団交に対する考え方については「教授会は、従来の方針に従い、(右の)団交については、学生と教員との関係は、教育と研究の場という見解から、それは一般の労働者と使用者との労使関係とは性格の異なるものであるということ、即ち、教育と研究の場は、多数の力で左右されうべき性質のものではないという理由で拒否し続けてきた」と述べている。

【教育当局の見解】

教育学部当局は「いわゆる六項目および四項目要求に対しては、この間学部執行部としていちおうの回答を出してきたが、学生諸君の要望に応えて、あらためて掲示のかたちでこれに答える」として、各項目の見解を示した。
72年12月に出された六項目要求では、「革マル派による川口君虐殺に対する見解と責任を明らかにすること」「問題解決を図るに当たっては、ロックアウト、機動隊導入、告示等によるのではなく、まず全学生、院生、教職員と先ず話し合うこと」のほか、糾弾闘争に立ち上がった学生、クラス、サークルの活動についての見解を求めるとともに、「機動隊導入などによる弾圧を反省せよ」としている。また、自治会活動については「新たな全学生の総意を反映する自治会を建設するならば、それを直ちに承認することを明らかにせよ」「16(註:号館)地下(革マル派)を自治会として承認し、自治会費などを下すことを決定した事実経過を明らかにせよ」「16地下の管理運営についての見解を明らかにし、学生の手に管理運営権を明け渡せ」と要求している。
この中で、自治会活動に関する当局の見解は次のようなものだった。
「学生自治会については、過去に経験してきたところをふまえ、真に学生諸君の総意に立った健全な組織の発展を望んでいる。自治会問題について、これを承認の方向で積極的に考えることを、昨年6月20日に確認している。」
「16号館地下を中心に活動していた『教育学部学生自治会』(松本委員長)に対して、その『自主投票』(中略)に示された学生諸君の意志を尊重し、これを教育学部を代表するものとして認めることにした(ここで自治会費をおろすことを決定したという事実はない)。そこへ川口君事件がおこり、松本委員長以下の執行部が事件をおこした革マル派に属する事実を重視し、決定の執行を停止し、やがてこれを白紙に戻した。」
「管理責任の上からいって16号館地下の管理運営権を全面的に学生諸君に委ねることはできない。しかし、学生諸君の自主的な活動の場として開放する姿勢に変わりはない。」
四項目要求は、72年12月6日のクラス委員総会において選出された常任委員会名で行われた。
1)クラス委員会総会で選出された新執行部を教育学部自治会常任委員会として即刻承認せよ。
2)「教育学部学生会規則」を即刻撤廃せよ。
3)自治会室、自治会費を即刻手渡せ。自治会費がないというならば、来年度までの暫定的援助金を提出せよ。
4)学生自治会の交渉権を認めよ。
各回答は以下の通り。
1)「教育学部学生自治会常任委員会」(永井委員長)を、自治会問題に関して話し合う唯一の代表として認めたことは、すでに1月23日の発表の通り。
2)教育学部学生会規則」の扱いは「教育学部報」第三号に示された考え方に立っているが、これは自治会承認問題との関連で考えたい。
3)すでに昭和41年から自治会費は徴収していない。暫定的援助金についても、これに当てる金がなく、考慮することができない。
4)学生自治会の交渉権問題については、現在のところ上記1)に示した姿勢にある。
ここにある1月23日の発表については、新入生歓迎パンフレットの「闘争日誌」にその経緯がある。
「1月23日。教育専任教員会は『教育学生自治会常任委員会(永井委員長)を自治会問題に関して話し合う唯一の代表として認める』旨の『1.23見解』を発表。ただちに学部団交を開き、榎本学生担当主任、伊藤副主任に説明を求める。榎本主任は『唯一の代表として認め』ながらも自治会として認めようとせず、また11.8以来の当局の態度をあいまいにしたまま、『機動隊導入もあり得る』等の発言を行った。」
見解発表の翌日10日には学部団交が開かれ、川副学部長が初めて出席したが合意には至らず決裂。その後、入試体制に入った当局は本部をロックアウトしたため、全学スト実委、行動委によって粉砕が試みられ、構内での集会が開かれた。こうした事態を受け2月22日には、教育専任教員会による「2.22見解」が在校生宛に郵送された。
(資料:『教育学部学生諸君へ-自治会承認問題の経緯について』昭和48年6月12日早稲田大学教育学部)


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