1973年2月15日(火) 社会科学部教授会が学生自治に関する告示

提供: 19721108
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社会科学部は、9日の学部集会中止に代わる告示を発表。そのなかで、学生自治全般および自治会承認についての見解を明らかにした。

【時系列】

●社会科学部当局が「学生集会に代えて」を告示。
●朝日新聞に「できるか自治会再建」の署名記事掲載。
●教育学部当局は「サークル協議会」(民青系)との懇談会を開く。


【社学当局による学生自治のあり方とは「学生の総意」による】

社会学部当局は2月9日に予定していた学部集会を中止し、2月15日付の告示「学部集会に代えて」の中でその理由を「2月9日の現状からして、平穏に学部説明会が催される状態ではなかった」と説明した。
さらに学生自治のあり方については「自治会規約の基本的精神に反しない限り学部はこれに介入すべきではなく、全学生の総意で決められるべきであるということである」として、臨執の行った規約改正についても、「その解釈に疑念はあるとしても、学生の自治を侵すことのないよう審議し、特に規約改正が自治会活動を阻害することのないよう留意して、その態度を留保してきた」としている。
自治会承認については「自治会の承認は既になされている(編註:革マル派自治会の承認)から、その執行部の承認と解される」とした。自治会費の支出に関しては「直接これに介入すべき筋合いのものではない。これらは、すべて学生の総意に委ねられている」としながらも「全学生の拠金によるものであるからその同意が必要である」と述べ、客観的な方式では「少なくとも全学生の過半数の賛成が必要」とした。すでに革マル派執行部下の前年72年6月に自治会費の支出についての学生投票が行われており、過半数の1700余票の賛成があったが、同年7月の仮処分申請により支払いは停止中だった。
同告示からは、おおよそ次のような社会学部自治会再建への動きがわかる。
72.11.28 学生700余人が15号館に集まり「臨時執行部」誕生
73.1.29 自治委員総会開催(2日間の試験延期)
73.1.31 学生大会で新執行部選出(7日間の試験延期)
73.2.2 六項目要求
73.2.3 団交要求(学部当局は拒否)
73.2.5 団交要求(学部当局は拒否)
73.2.9 学部説明会→中止
さらに告示では、川口君虐殺事件に言及して次のように述べている。
「川口君虐殺の責任所在を明確にせよという問いに対しては、全大学人の問題であり、殊に学部としては、二度とかかる事態の惹起せぬよう、教育面から積極的に指導すべきものであると深く反省する次第である。暴力なき平和な学園は、教職員のみの力では到底実現できない。殊に、大学は暴力に対して無力でありその事態収拾には限界がある。教職員・学生の協力によってのみそれが可能なのであるといわねばならない。われわれは、学生の自治を承認しても暴力を認めたものではないということである。このことについては、なお今後検討すべき問題であるといわねばならない。」


【朝日新聞の記者が見た「早大紛争3ヵ月」】

1973年2月15日付朝日新聞朝刊には、「できるか自治会再建」「続く“二重執行部”課題そっくり新学期へ」との見出しで、紙面3分の2、8段抜きの記事が載った。「首都部・堀鉄蔵」の署名がある。
前文で「新しい自治会の理念について、学生と学部当局の間で食違いが目立ち、公認問題はタナ上げのまま“二重自治会”状態が続いている。自治会とセクトなど、問い直されるべき多くの課題をかかえたまま、早大の運動は新入生を迎える4月に舞台を移すことになった」と示す一方で、4つの見出しを立てて現状を分析した。
●脱政治課題
今回の早大闘争の特異な点は、この3ヵ月間に政治的課題が一つも登場しなかった点にある。1月末、学年末試験をめぐって一文、政経、教育、社会科学の各学部でそれぞれ開かれた学生大会での行動方針も①新自治会の即時無条件承認②全学総長団交要求、など学内問題に限られていた。にもかかわらず、どの学生大会にも毎回一千人を超える学生が集まり、数時間に及ぶ討論が続いた。一次、二次早大紛争と比べてのこの違いは、反革マルの学生がめざした自治会の理念にあった。(中略)民主主義の基本である「自由」の保障がその目標だった。いま問われているのは「セクトのためのものになってしまった自治会」の存在意義であるといえる。
●王国の崩壊
リンチ殺人事件の前、同派(革マル)は一文、二文、商の三学部に“公認”自治会を持ち、政経、社会科学、教育の三学部でも自治会をつくりあげた。早大八学部のうち六学部を“制圧”し、全学中央自治会を名乗って、その“王国ぶり”を誇っていた。それが現在では、集会参加者は全都動員をかけても数百人。1月19日の武力衝突以後、反革マル学生との正面切っての闘争を戦術転換して以来、最も抵抗の弱い二文臨執の活動を妨害する“夜行性”が目立つようになった。
●ミニ全共闘
反革マルの自治会創出運動の中で、最近各学部の「行動委員会」の動きが注目されている。全学部合わせても百数十人のこのグループは、1月8日の反革マル総決起集会に黒ヘルメットをかぶって現れ、他の学生との間に「なぜ必要なのか」「思想表現の手段だ」などと“メット論争”をまき起こした。同月19日、11号館に逃げ込んだ革マル派と数千人の学生が衝突を繰り返したとき、ヘルメット、竹ざお姿で先頭に立ったのもこのグループだった。「行動委」は黒ヘルメットに「C連」(サークル連絡会議)「ⅡJ」(川口君のクラス名)などと書いているが、中には、「全共闘」の文字をペンキで塗りつぶしたものもいて、ノンセクトラジカルの集合体、いわば“ミニ全共闘”と一般には理解されている。(中略)一方、早大の自治会創出運動は必ずしも全学的な広がりをみせているわけではまだない。学生大会に一千人が出席している同じときに、図書館の利用者数は連日六千人を超えていた。早大四万人の学生のうち、理工学部の約七千人は一部を除き終始傍観者的だった。反革マル新執行部のメンバーの主体は1、2年生で、3、4年生の参加はわずかな数に限られている。それらの学生に対して行動委がどう働きかけてゆくのか。反革マル=新自治会創造の運動の中から生まれてきた“最前衛”の思想と行動が、運動の中で浮上する危険をはらんでおり、その行方は今後の早大の運動の一つの重要なカギをにぎっている。
●大きい隔たり
学生側の運動に対し、各学部当局はことしになって次々と反革マルの自治会執行部に対する“見解”を告示した。が、一部を除いては相変わらず「運動は評価するが、いまの新執行部は認めない」との態度をくずしていない。1月23日の教育学部を皮切りに政経、一文が出した告示は、いずれも過去の学友会規約をたてにし、手続きや条件のみを強調して運動の内容を見ていない、と学生側の反発を受けている。新自治会執行部を「自治会問題について話合う唯一の代表として認める」ことを決めた教育学部が「他学部に比べて一歩前進した」と評価されているのは例外で、学部当局と学生側の自治会に対する考えの隔たりは大きい。


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